松本健太郎箸『人は悪魔に熱狂する』感想レビュー
書店で見つけました。
松本健太郎氏
『人は悪魔に熱狂する』
タイトルを見た瞬間に「読もう」と思いました。
人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学 [ 松本健太郎 ]
ページ数…332ページ
サブタイトルが“悪と欲望の行動経済学"
行動経済学とは
“人間は必ずしも合理的ではない"
といった前提のもと、人間の意思決定のメカニズムを研究する学問です。
「心理学+経済学」とも呼ばれています。
今までも行動経済学の本は何冊か読んできましたが、この本は人間の“悪"の部分に着目しています。
「ヒット商品には必ず"悪"の顔がある」
と著者は言っています。
いい事ばかり、キレイ事ばかり言ってても
世の中、生きていけません。
この本のおもしろポイントは、
各章のはじまりに、
「浦島太郎」「花咲じいさん」「カチカチ山」「笠地蔵」など誰でも知っている昔話を紹介し、
“悪“の視点から考察しているところです。
ただ、"悪“が悪いわけでありません。
“善"だけではなく、“悪"もあるんだと認識することが大切だということです。
“悪“には、時に想像以上の爆発力を発揮し、
想定以上のヒットを生み出す力があります。
“善"よりも“悪“の方が確率は高いようです。
例として挙がっていた事案のひとつにマクドナルドの「サラダマック」があります。
当時業績不審だったマクドナルドが新商品を開発するに当たって、消費者調査で挙がってきた
「健康になりた〜い」
「マックは不健康そうだから行かな〜い」
などの回答から「サラダマック」を開発しましたが、結果は惨敗。
その次に開発したのは、
健康とは真逆の「クォーターパウンダー」です。
背徳感の塊のようなこの商品が大ヒット❗️
表では「健康」「痩せたい」など“善“が前面に出ていますが、裏には「肉をたらふく食べたい」「肉にかぶりつきたい」といった“悪"が存在していて、その“悪“を刺激することでヒット商品が誕生したいうことです。
「データが必ずしも真実ではない」とも言っています。同感です。
調査結果の通りに実行して成功していたら、世の中のものはほとんど成功してしまいます。
真実を見抜く洞察力とセンスが必要ですね。
このように、この本では身近で話題になっている事案を取り上げて、マーケティング、行動経済学、データサイエンス、統計学の視点から考察しています。
「この現象は⚪︎⚪︎バイアスと呼ばれています」と少し学問的な部分もありますが、ニュースやネットで目にする話題ばかりなので、抵抗なく読めると思います。
おもしろかったので3日間で読み終えました。
最後に、少し傾向は違いますが、
私が「なるほど」と思った部分をご紹介します。
「占い」を考察している場面で、
現代人の不満について触れています。
「現代人の"不満"とは、主に自分の境遇と他人のそれを比較して、"劣っている" "不足している"と感じた場合に生まれる。
一方、"幸せ“とは他人との比較による相対的なものではなく、絶対的なもので、自分が幸福かどうかを決めるのはその人自身の考え方の問題であり、完全に主観の領域である」
確かに❗️
「人間は客観的に見れば他人より劣っている暮らしであっても、主観的には幸せという矛盾を受け入れられる都合の良い生物である」んだそうです。
著者は
「この本はマーケティング理論、行動経済学、データサイエンスを用いて、ヒットした商品、事情、人の背景に隠されている"悪と欲望"を読み解いています。
人間の心には“悪“が必ず潜んでいて、それを認めない限りは人間を理解しているとは言えないんだということこそ、もっとも伝えたかったテーマです」と締め括っています。
人間の本質を理解したい方は是非読んでみてください