杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』あらすじ&感想
『世界でいちばん透きとおった物語』
著者 ;杉井光
発行日 ;2023年5月1日 発行
2023年9月15日 第12刷
ページ数;233ページ
読了日 ;2023年9月22日
【評価】
● 文字数 ★★☆☆☆
● 読みやすさ★★★★★
● スリルさ ☆☆☆☆☆
● 恋愛要素 ☆☆☆☆☆
● スピード感★☆☆☆☆
【あらすじ】 ※ネタバレなし
主人公は藤阪燈真。母親の恵美と2人で暮らしている。恵美はフリーランスの校正者で、燈真も母親の仕事を手伝っている。燈真の父親は宮内彰吾(本名;松方朋泰)という有名なベストセラー推理作家である。宮内彰吾には妻子がおり、燈真は恵美と宮内彰吾の不倫の末に生まれた子供である。母親の恵美からその事実と一切の援助(養育費等)は受けていなく、連絡もとっていない、つまり認知もされていないということは知らされていた。なので、燈真も宮内彰吾に会ったことも彼が書いた小説も読んだこともなく、宮内彰吾への思い入れもない。そんなある日、恵美が交通事故で亡くなってしまった。そして、母の死から2年が過ぎた頃、ネットニュースで父親の宮内彰吾が癌で亡くなったことを知る。今まで会ったことも思い入れもないので特に気に留めていなかったが、宮内将吾の訃報の1ヶ月後、宮内彰吾の死について話があるということで実子である松方朋晃と名乗る人物から突然連絡が入った。朋晃は宮内彰吾の遺品を整理していたところ、ひとつの封筒を発見した。その封筒には『世界でいちばん透きとおった物語』と書かれていたが中身は空っぽ。宮内彰吾の遺作に違いないと確信した朋晃は原稿を探すために思い当たる場所を探したが結局見つからず、最後の手段として燈真に連絡をしてきた。燈真はもちろん遺作のことなど全く知らない。原稿が存在するのかどうかも定かではないが、結局、燈真は原稿探しを引き受けてしまう。
原稿を探すため、生前、宮内彰吾と接点があった人物への聞き込みを開始するが、宮内彰吾は無類の女好きで不倫相手がたくさんいた。話を聞く相手のほとんどがその不倫相手であった。宮内彰吾の話を聞けば聞くほど、自分の父親がいかに人間のクズであるかということを確信してしまい幻滅してします。ただ、「世界でいちばん透きとおった物語」の情報は着々と集まってきてしまう。葛藤がありながも原稿の在処を突き止めるために奔走する燈真。果たして、宮内彰吾の遺作『世界でいちばん透きとおった物語』は見つかるのか?
この一連の捜索活動では、母の恵美の仕事のパートナーであった深町霧子という編集者が燈真の原稿探しを手伝っている。燈真が聞いてきた情報をもとに、霧子は、なぜ宮内彰吾が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を書き上げようとしていたのかの謎を解明していく。そして、この作品が実は普通の小説ではないことを突き止める。この小説に込めたメッセージと宮内彰吾が後世に残したかったことを霧子は推理して解明していく。その事実を聞いた燈真。父親の宮内彰吾のクズさを悉く知ってしまった彼は、果たしてどういう行動を起こすのか?
【感想】
帯の
電子書籍化絶対不可能!?
“紙の本しか“体験できない感動がある!
というメッセージに惹かれて購入しました。なので、常にこのことを考えながら読み進めていきました。最後まで読むとこのメッセージの意味はもちろんわかります。そして、それが○○愛であるがゆえであることも理解できます(○○はネタバレになってしまうので敢えて書きません)。
さて、構成は非常にわかりやすく、全部で13章に分かれています。時系列で物語は進んでいき、1章ごとに場面転換をするので読書が苦手な私でも苦なく読むことができました。また、タイトルの『世界でいちばん好きとおった物語』が意味するのはどういったことなのか、「世界でいちばん透きとおった」とは真逆である宮内彰吾の人間としてのクズさ、ダークさが、最終的にはどうなるんだということを常に考えながら読んでいたので、あっという間に読み終わってしまいました。そして、「そういうことだったのか!」と読み終わった後の爽快感は格別でした。また、執筆の工夫に「すごい!確かにそうだ」と何回も読み返して確認をしてしまいました。ストーリーだけではなく、執筆するときの細工も素晴らしいと感じる1冊でした。興味のある方は是非、購読をしてみてください。