読書が苦手な私が読んだ本

私は読書が苦手です。そんな私でも読めた本をご紹介します。実際に本を読んでもらいたいのでネタバレはしないように心掛けています。このブログを読んで「読んでみよう」と思う人が1人でも増えたら嬉しいです。

葉真中顕「ロストケア」感想レビュー

2023年3月24日から松山ケンイチさん、長澤まさみさん出演により映画上映された

葉真中顕氏原作の「ロストケア」


ロスト・ケア【電子書籍】[ 葉真中顕 ]

ページ数;378ページ

この本を読んだきっかけは、

映画の予告映像です。

 「なぜ彼は42人を殺したのか」のテロップ後、

 松山ケンイチさんが「僕は42人を救いました」と

 長澤まさみさんに静かに話します。

このシーンだけで原作を読んでみようと思いすぐに購入しました。

 

ストーリーは死刑判決が降る裁判から始まります。

被告は(映画では「松山ケンイチさん」原作では〈彼〉)は42人も殺害しています。

これだけ見ると死刑判決は当たり前のように感じますが、

〈彼〉には全く罪の意識はありません。

そして、「僕は42人を救いました」と語ります。

なぜ〈彼〉はこのように主張するのでしょうか?

 

ストーリーは現代の日本です。

主要な登場人物4〜5人の目線で物語は進んでいきます。

少子高齢化が社会問題となっている日本。

親が高齢になると発生するのが介護の問題。

一言で「介護」と言っても、国の制度で要支援、要介護に区分が分かれているように高齢者の症状によって国や自治体から受けられるサービスは違いますし、介護する側の家族構成や家庭環境も違います。また、経済的余裕の有無によっても介護をする環境は違ってきます。

施設に預けられる経済的余裕のある人を“安全地帯にいる人”
施設に預けられる経済的余裕がなく、在宅介護をしなくてはいけない人を“崖っぷちの人”として表現されています。

各登場人物が抱える介護の問題が物語の深さをさらに深めていきます。

そして、国の介護制度の使いにくさやそれを決めている政治家の姿勢にも言及しています。

この小説の中で起きている事件はフィクションですが、現代の社会問題を考えると、規模は大小あれどいつ起きてもおかしくない事柄だと感じました。

小説を読んで、現実世界の社会課題について考えさせられたのは初めての経験でした。

 

物語にはキリスト教の聖書にかかわる部分も登場します。

本中に何度も

「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」

という聖書の一節が登場します。

この言葉が非常に奥深い意味を持っています。

何も考えずに読むと、いい言葉だ、肝に銘じておこうと思いますが、

置かれている生活環境によっては、犯罪に繋がってしまう可能性のある一説であることに気づかされます。

 

そこまで深く考えず、映画の予告映像だけで気軽な気持ちで読もうと思った本でしたが、いろいろなことを考えされられ、気分が少し落ちこむ作品でした。

ただ、〈彼〉が誰なのかはドキドキしながら読めます。

〈彼〉は映画では松山ケンイチさんでありますが、それが誰なのかを楽しみながら、推理しながら読むことができます。

原作ではギリギリまで正体はわかりません。

なので、そのスリルを味わいたい方は、映画を観る前に原作を読むことをおすすめします。

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【新品】ロスト・ケア 葉真中顕/著