読書が苦手な私が読んだ本

私は読書が苦手です。そんな私でも読めた本をご紹介します。実際に本を読んでもらいたいのでネタバレはしないように心掛けています。このブログを読んで「読んでみよう」と思う人が1人でも増えたら嬉しいです。

東野圭吾「ゲームの名は誘拐」感想

ゲームの名は誘拐

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著者  ;東野圭吾

発行日 ;2005年6月20日(初版1刷発行)

     2022年6月10日(45刷発行)

ページ数;332ページ

読了日 ;2023年5月26日

【評価】

● 文字数  ★★☆☆☆

● 読みやすさ★★★★★

● スリスさ ★★★★★

● 恋愛要素 ☆☆☆☆

● スピード感★★★★★

【あらすじ】

仕事においてもプライベートにおいても常勝のエリート広告マン佐久間駿介。クライアントの日星自動車の新車発表キャンペーンの責任者であったが、その計画が突如白紙撤回となってしまいます。その決断をしたのが、最近、日星自動車の副社長に就任した葛城勝俊。葛城自身も今までに負けを経験していません。そんな葛城に対して、負け知らずの佐久間は復讐心を燃やします。その時に出会ったのが葛城の娘樹理。彼女は葛城家からの家出を計画してしました。1人で生活していくために必要なのはお金。葛城勝俊に復讐をしたい佐久間駿介。お金を葛城家から奪いたい娘の樹理。2人の利害が一致し、身代金3億円を要求する狂言誘拐(ゲーム)がスタートします。エリート広告マンの佐久間の計画により身代金受取りまでの計画が次々と実行されていきます。彼の思惑通りに事態が進み、いよいよ身代金を受け取るところまで漕ぎ着けます。果たして無事に身代金を受け取ることができるのか?最終的にゲームに勝つのは誰なのか?「そう来たか!」と驚く展開が待っています。

【感想】

推理小説です。ただ、普通の推理小説とは少し違ったテイストなので非常におもしろく、読み応えのある1冊です。

主役の佐久間駿介は負け知らずの人生を歩んできました。そのためか思考は常にドライで冷血で合理的です。プライベートでも特定の女性と付き合う訳ではなく、同時に複数の女性と関係を持ったり、自分の都合でスパッと切り捨てたり。。。そんな自信に満ち溢れた日常を送っていましたが、突然、クライアントから計画の中止を言い渡されます。納得のいかない佐久間は復讐を決意し、そのために思いついたのが狂言誘拐。それを一種のゲームとして位置づけ、葛城勝俊への復讐を企みます。

この小説の面白い部分は視点が全て犯人側(佐久間側)から描かれている点です。通常、被害者側からの視点で描かれることが多いですが、この小説は犯人がどういった心情と思考で犯罪を完結させようとしているのか、つまり、いかに無事に身代金を受取るかを描いています。被害者家族(葛城勝俊)の思考と動き、警察の動き(発信器、尾行など)を先読みし、それを掻い潜りながら次から次へと犯行を実行していきます。思惑通りに、非常にスムーズに犯行が進んでいきます。いや、スムーズ過ぎるのです。なので「こんなに上手くはいかないでしょ!」という疑問とちょっとした不満を持ちながら読み進めました。それと同時にどういうフィナーレ(誰が勝者か?)を迎えるんだろうというワクワク感も感じながら読んでいきました。

その疑問と不満は途中から一気になくなりました。この誘拐ゲームは単純な狂言誘拐ではなかったのです。これには裏(真)の狙いがあったのです。裏の狙いがあるということと真相を知りたい!という気持ちが読むことをやめさせてくれませんでした。最後は「こういうことだったのか」という納得感と興奮を覚えます。振り返ると登場人物は全員悪者です。善者はひとりもいません。それもこの小説を面白くしている一因かもしれません。

2003年に"g@me."というタイトルで映画化もされています。(アマゾンビデオリンク先;https://amzn.to/4316D9D藤木直人さん主演で仲間由紀恵さんが出演しています。原作が面白かったのでアマゾンビデオで映画も視聴しました。基本的に原作に忠実に描かれていますが、結末が原作とは違います。原作と映画、どちらの結末が好みかは人それぞれだと思います。原作の巻末に藤木直人さんがこの小説と映画についてのコメントが書かれています。それを読んだ後に映画を観るのもオススメです。

是非、小説「ゲームの名は融解」、映画"g@me."の両方を見比べてみてください。