読書が苦手な私が読んだ本

私は読書が苦手です。そんな私でも読めた本をご紹介します。実際に本を読んでもらいたいのでネタバレはしないように心掛けています。このブログを読んで「読んでみよう」と思う人が1人でも増えたら嬉しいです。

東野圭吾 文庫「どちらかが彼女を殺した」新装版 感想レビュー

どちらかが彼女を殺した新装版

著者  ;東野圭吾

発行日 ;2023年6月15日 第1刷発行

ページ数;355ページ

読了日 ;2023年8月12日

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【評価】

● 文字数  ★★★☆☆

● 読みやすさ★★★★★

● スリルさ ★★☆☆☆

● 恋愛要素 ★★☆☆☆

● スピード感★★★★

【あらすじ】  ※ネタバレなし

OLの和泉園子が自宅で亡くなっているのが発見された。第一発見者は唯一の肉親である兄の和泉康正。園子から康正に電話があり「お兄ちゃん以外、信じられなくなっちゃった」と告げ、それを最後に園子は死んだ。電話があったのは金曜日の夜。愛知県警で働いている康正は勤務明けの月曜日の朝、気になって園子が暮らす東京で出向き、園子の自宅でベッドに横たわって死んでいる園子を発見する。一見、自殺のように見える現場だが、警察官である康正はすぐにこれが他殺であると察知し、自分で犯人を見つけ出し復讐することを決意する。現場を自殺であると警察に信じ込ませるための細工を施したが、そこに疑問を抱いたのが、練馬署で勤務する刑事の加賀恭一郎。警察官でもある康正が巧妙に仕組んだ現場の微かな違和感を洞察力の鋭い加賀は見逃さなかった。

園子は誰に殺されたのか。園子には親しくしていた人物が2人いた。ひとりはお付き合いをしていた佃潤一。もうひとりは親友の弓場佳世子。しかし、佃潤一は園子と別れて弓場佳世子と付き合っていた。その事実を突き止めた康正は犯人をこの2名と確信して証拠を集めていく。一方、この事件には康正が何かを隠していると直感している加賀は執拗に康正を追い続ける。殺害現場を自殺現場にすり替え、自ら復習を果たそうとしている和泉康正と、その事実と康正の狙いを直感で確信している加賀との心理戦が繰り広げられる。

果たして、どちらが和泉園子を殺害したのか。

康正は復習を果たせるのか。

それとも加賀が全ての事実を明らかにし、康正の復習を阻止できるのか。

【感想】

非常に切ない気持ちにあるお話です。和泉康正は唯一の肉親であり、妹想いであるため、妹の園子の死に直面した時のショックは相当なものだったと想像できます。そして、犯人が捕まるだけでは足りず、自ら復習をするという決意は想像に難くありません。本作のおもしろポイントは2つあります。ひとつは、容疑者候補の2人のアリバイを崩していく過程です。そしてもうひとつは、被害者の兄である和泉康正と刑事である加賀恭一郎とのやり取りです。康正は交通課勤務ではありますが、両者が警察関係者であるということから、お互いの手の内と狙いを探り合いながらストーリーが展開していくのは読み応え満点です。物語の後半から、康正と加賀のお互いの推理合戦が展開されます。お互いが持っている情報から立てた仮説を披露していきます。この推理合戦の勝者を想像しながら読むのもおもしろいかもしれません。最後は展開に展開を重ねて終了します。表の裏は裏、裏の裏は表。しっかりと読み込まないと少しこんがらがるかもしれませんので気合い入れて読みましょう。

本作は東野圭吾氏の「加賀シリーズ」として展開されている小説のようです。本書は1999年5月に文庫に収録されたものの新装版ですので、書かれたのは今から20年以上前になりますね。先日、ブログをアップした「希望の糸」にも加賀恭一郎が登場します。「希望の糸」では加賀は警察署の上層部にいて、主に活躍していたのは従兄弟であり部下の刑事でしたので、加賀はどちらかと言えば脇役でした。ですが、本作では加賀はまだ若く20代で、彼が主役で活躍します。鋭い洞察力と情熱がこもった捜査、康正の復習を阻止するために奔走する姿は「希望の糸」では見ることができなかった一面ですので、合わせて読むと良いかもしれません。

東野圭吾 文庫「希望の糸」感想 - 読書が苦手な私が読んだ本