読書が苦手な私が読んだ本

私は読書が苦手です。そんな私でも読めた本をご紹介します。実際に本を読んでもらいたいのでネタバレはしないように心掛けています。このブログを読んで「読んでみよう」と思う人が1人でも増えたら嬉しいです。

東野圭吾 文庫「私が彼を殺した」あらすじ&感想レビュー

私が彼を殺した新装版

著者  ;東野圭吾

発行日 ;2023年7月14日 第1刷発行

ページ数;431ページ

読了日 ;2023年8月18日

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【評価】

● 文字量  ★★★☆☆

● 読みやすさ★★★★★

● スリルさ ★★★★

● 恋愛要素 ★★☆☆☆

● スピード感★★★★

【あらすじ】 ※ネタバレなし

主な登場人物は、神林貴弘と神林美和子の兄妹。神林美和子の結婚相手の穂高誠。穂高誠の事務所で穂高のマネージャー的な存在の駿河直之。そして、詩人の神林美和子の編集担当の雪笹香織の5人。

神林貴弘と神林美和子は幼い頃に交通事故で両親を亡くしている。残された貴弘と美和子はそれぞれ違う親戚のもとで育てられ、15年ぶりに同居することになった。そして美和子は脚本家である穂高誠との結婚式を数日後に控えている。この兄妹は両親を亡くし離れて暮らしていたので、仲は良いが、その関係性と感情は普通の兄妹とは少し違っていた。その異様な感情により、神林貴弘は美和子と穂高誠との結婚を歓迎していない。

穂高誠は女性関係が腐っている。結婚式前日、神林兄妹、穂高誠、駿河直之、雪笹香織が穂高誠の自宅で集まっていた際、庭にひとりの女性(浪岡準子)が現れる。準子はかつて穂高誠と付き合っており、穂高との間できた子を堕胎させられている。捨てられた彼女は、ある決意をしてその場に現れた。そして、その場を収めたのが駿河直之である。彼の説得で一旦は事は収まったが、後にレストランで皆で会食をしていて不在だった穂高誠の家の庭で彼女が自殺してしまった。その事実を隠蔽することを決意した穂高誠は、駿河直之とともに彼女の遺体を彼女の自宅に運び込み、自宅で自殺したように細工する。そして、穂高との関係はなく、準子は駿河直之と関係があり、今回の自殺の原因を駿河直之に押し付けてしまう。

駿河直之はかつて車のタイヤを作る会社の経理を担当していた。ギャンブルによる借金から会社の金を横領してしまう。そのピンチを救ってくれたのが大学時代に同じサークル仲間だった穂高誠である。彼の事務所で働くようになったが、穂高には一切逆らえない。彼の公私による横暴を食い止めることもできずに、いつも後始末は駿河直之の役目。穂高に対する悪の感情が少しずつ貯まっていった時に起こったのが浪岡準子の自殺。実は浪岡準子は駿河直之が紹介した女性であり、しかも駿河が密かに想いを寄せていた女性だった。そして、自殺の後始末と責任を押し付けられたときに穂高誠への感情が臨界点に達した。

雪笹香織は、神林美和子の詩人としての才能を見抜き、詩集を出版した。かつて穂高誠の担当でもあった香織は、密かに穂高誠と付き合っていた。そして、彼女も穂高との間でできた子を堕胎しており、捨てられた。そんな過去があるにも関わらず、ある時、穂高から神林美和子を紹介してほしいという依頼を受けて、美和子を穂高に紹介した。そして、二人は付き合うようになり、結婚することになった。

そんな複雑な感情と過去が背景にあるが、結婚式は当日を迎え、事件が起きます。教会に入場してきた穂高誠が突然倒れてその場で絶命した。明らかに誰かによる殺害である。穂高の日頃の言動から彼に恨みを持っている人間は数多くいるが、結婚式という閉鎖的空間での死ということで容疑者は神林貴弘、駿河直之、雪笹香織に限られてくる。彼らには穂高誠殺害の動機がある。そして、この事件の担当になったのが練馬署の加賀恭一郎である。持ち前の洞察力と行動力で犯人を追い詰めていきます。最後は容疑者3人と神林美和子が穂高誠の自宅に集められ、事件の真相を明かしていきます。果たして穂高誠を殺害した犯人は誰なのか?

【感想】

加賀恭一郎シリーズです。本書は1999年2月にノベルスとして刊行され、2000年3月に文庫に収録されたものの新装版です。今から20年以上前の作品ですね。

非常に惹き込まれるストーリーでした。異常な兄妹愛から始まり、非現実的ではあるが、だからこそ読者はのめり込むんだと思いました。ページ数は多かったですが、私はこの東野圭吾の術にまんまとハマり、一気に読んでしまいました。

本書は、章ごとに目線が変わります。「神林貴弘の章」では神林貴弘の視点で物語が進行し、思考や感情も神林貴弘のものとして描かれています。同じように「駿河直之の章」「雪笹香織の章」もあり、それぞれの章で主役が変わるといった感じで構成されています。主語が変わることで、同じシチュエーションなのに感じ方や見ている視点が違うことがこの本を楽しむポイントのひとつかもしれません。そして、途中でばら撒かれている犯人特定のカギにより、「こいつが犯人かぁ」と想像しながら読み進めていきますが、そのカギは複数あり、「あれ、もしかしらこっちが犯人?いや、こっちかもしれないな」と思考が乱されます。でも、そこもおもしろいポイントのひとつです。今までに何冊か小説を読んできましたが、私の中ではトップ3に入るくらいおもしろい1冊でした。まだ読んでいない人は、是非、読んでみてください。