【アメトーク 読書芸人】綿矢りさ「嫌いなら呼ぶなよ」レビュー
先日のアメトーク“読書芸人“で紹介されていました。
綿矢りさ「嫌いなら呼ぶなよ」
ページ数;207ページ
発行日;2022年7月30日初版
(2023年4月10日5版発行)
読了日;2023年4月29日
【評価】
●ページ数 ★★☆☆☆
●文字数 ★★☆☆☆
●状況説明量★☆☆☆☆
●読みやすさ★★★★★
●スリルさ ★★★☆☆
●恋愛要素 ☆☆☆☆☆
●スピード感★★★☆☆
【あらすじ】
「眼帯のミニーマウス」
「神田タ」
「嫌いなら呼ぶなよ」
「老は害で若も輩」
の4つのストーリーからできている短編集です。
なのでひとつのストーリー自体は短く簡潔です。
それぞれは全く関連しないお話ですが、私なりに考えたこの本のテーマは“本音と建前“でしょうかね。
各ストーリーに出てくる主人公は表面上は“いい子“ぶっているんですが、心の中では180度違うことを考えていて、その心の声を中心に物語が進んでいきます。
「眼帯のミニーマウス」
カワイイが命の主人公はルックスに自信がないのでプチ整形を施していきます。それを会社の同僚からイジられちゃいます。表面上は気にしていない風を装っていますが、心の中ではよく思っていなく、イジってくる同僚への逆襲を画策します。
「神田タ」
主人公はある時、話題のYouTuberの動画を見て徐々にのめり込んでしまい、熱狂的なファンになってしまいます。熱狂的だからこそ徐々に粘着質なファン行動に出ていってしまいます。バイト先で実際に会う機会を得た主人公。行き過ぎた感情により、やってはいけない行動(犯罪?)をしてしまいます。
「嫌いなら呼ぶなよ」
友人の新築祝いパーティーに呼ばれたある夫婦。参加者は主催者夫婦、主人公とその妻、もう一組の夫婦。最初は子供たちも交えた和気あいあいのバーペキューパーティーでしたが、実は真の目的は、主人公の不倫を問い詰めることでした。不倫をされた妻が主催家の親友に相談しており、主人公以外の全員がこのパーティーの目的を知っていました。様々な証拠を突きつけられ追い込まれる主人公。表面的には自分に非があり悪かったとコメントしていますが、実は心の中では全く別な視点でこの状況を捉えており全く反省していません。果たして結末はどうなるんでしょうか?
「老は害で若も輩」
女性作家とフリーライターと編集者のお話です。編集者の企画で女性作家にインタビューをして雑誌に掲載すると言うもの。インタビュアーはフリーライターです。一通りの取材が終了し、締切日も迫り、最終確認の段階で女性作家が難癖をつけてきます。実は9年前にもこの女性作家とフリーライターには同じような出来事があり、再びといった感じで2人のメール上での喧嘩が始まります。最初は傍観していた編集者ですが、2人からも意見を求められメールでコメントをします。そして、そのコメントにも難癖をつけ始める2人。編集者は徐々に建前と本音のバランスが崩れ、お酒の力も加わったせいで最終的にはやってはいけないことをしてしまいました。果たして何をしてしまったのでしょうか?
女性作家の名前が「綿矢りさ」となっているところにユーモアを感じます。本人がそんな人ではないことを祈ります(笑)
【感想】
表現としては今風の書き方なので、ブログやLINE、メールを読んでいる感覚でした。人によっては少し読みにくいなと感じるかもしれません。
各あらすじは上述の通りですが、どれについても人間の本質を面白おかしく描写しています。日常生活でも、他人から認識される表情や言動、発言した内容と本心(内心)で思っていることが違うことは多々ありますよね。
私が一番おもしろいと感じたのは「嫌いなら呼ぶなよ」です。社会常識的、倫理的に圧倒的に悪いのは主人公なのに、その主人公はどこか他人事。今、目の前で起きていることをまるで別室のモニターで客観的に見ていて、今の状況を冷静に分析をしているところを楽しめました。ものすごく神経が図太くないとできない芸当かと思いますが、世の中にはそう言う人はきっといるだろうと感じてしまいました。
“本音と建前“…
読むと共感できる部分を見つけることができると思います。