読書が苦手な私が読んだ本

私は読書が苦手です。そんな私でも読めた本をご紹介します。実際に本を読んでもらいたいのでネタバレはしないように心掛けています。このブログを読んで「読んでみよう」と思う人が1人でも増えたら嬉しいです。

伊坂幸太郎「シーソーモンスター」あらすじ&感想

「シーソーモンスター」

 著者  ;伊坂幸太郎

 発行日 ;2022年10月25日 初版発行

 ページ数;457ページ

 読了日 ;2023年6月28日

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【解説】

共通ルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなで一斉に書きませんか?

本著は“螺旋プロジェクト“の中の1冊です。“螺旋プロジェクト“とは、伊坂幸太郎氏の呼びかけで始まった8人の作家による競作企画です。

共通ルールは

 ①「海族」vs.「山族」の対立を描く

 ②  共通のキャラクターを登場させる

 ③  共通シーンや象徴モチーフを出す

このルールに則って、8人の作家が作品を書き上げています。

1)大森兄弟「ウナノハテノガタ」/原始

2)澤田瞳子「月人壮士」/古代

3)天野純希「もののふの国」/中世.近世

4)薬丸岳「蒼色の大地」/明治

5)乾ルカ「コイコワレ」/昭和初期

6)伊坂幸太郎「シーソーモンスター」/昭和後期

7)朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」/平成

8)伊坂幸太郎「スピンモンスター」/近未来

9)吉田篤弘「天使も怪物も眠る夜」/未来

今回は、伊坂幸太郎の「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」を読みました。

1冊に2つの物語が盛り込まれています。

【評価】

● 文字数  ★★☆☆☆

● 状況説明量☆☆☆☆

● 読みやすさ★★★★★

● スリルさ ★★★★

● 恋愛要素 ☆☆☆☆☆

● スピード感★★☆☆☆

【あらすじ】

時代設定は昭和後期。北山家は直人、宮子夫婦と直人の母セツの3人で暮らしています。直人は製薬会社で働く営業マンです。一見平凡な家庭に見えますが、よくありがちな嫁姑問題が勃発しています。宮子は専業主婦。宮子のする家事にいちいちケチをつける姑のセツ。そんな日々が続きますが、実は宮子は以前は情報員、つまりスパイとして諜報活動をしていた人間でした。すでに情報員は引退していますが、あらゆる訓練を受けているため、肉体的にも精神的にも非常にタフです。なので、セツのいびりにも耐えられるのです。全く相性の合わない2人。「それは実は先祖から伝わる因縁です」と突然現れた保険員から訳のわからないことを伝えられます。どういうことなのでしょうか?実はセツにも秘密がありました。まさに「海族」と「山族」の戦いです。果たしてセツの秘密とはなんでしょうか?この物語の戦いとはなんでしょうか?

【感想】

冒頭、直人の仕事内容や先輩とのやり取り、仕事の悩みなどが細かく描写されているので、直人を中心に進んでいくストーリーなのかと思いきや、実は宮子を中心に物語は進んでいきます。宮子が昔、スパイだったという突拍子もない設定ではありますが、スパイという非現実的、日常生活を送っていると接触することがない世界と嫁姑という比較的わかりやすく世界をうまく融合して描いている部分が面白ポイントです。螺旋プロジェクトでは、「海族」と「山族」の対決や共通のキャラクターの登場などのルールがありますが、螺旋プロジェクト作品の1冊目がこのシーソーモンスターだったので、最初はどう言うことなのかを理解できずに読み終えてしまいました。ですが、次に続く「スピンモンスター」を読むと「あ、そういうことなのね」と合点がいく部分が多くなってきますし、この2つの物語はしっかりと関連しています。文章自体は読みやすく、状況設定も想像しやすいので、まずは最後まで一気に読んでしまうことをオススメします。

スピンモンスターの時代設定は近未来です。2050年頃を描いています。全てがデジタル化され、全てがデジタルで監視されている世の中で、アナログの手紙の配達員をしている青年が主人公です。2050年は今から約30年後です。本当に30年後にこんなことができるようになっているか?であったり、きっと30年後はこんな感じなんだろうなぁと思う部分もたくさんあり、想像しながら読むと楽しいと思います。もちろん螺旋プロジェクトのルールも守られています。先述しましたが、シーソーモンスターとの繋がりはあります。どのような関わり方をするのかを是非楽しんでください。