読書が苦手な私が読んだ本

私は読書が苦手です。そんな私でも読めた本をご紹介します。実際に本を読んでもらいたいのでネタバレはしないように心掛けています。このブログを読んで「読んでみよう」と思う人が1人でも増えたら嬉しいです。

蒴立木 文庫「死亡推定時刻」あらすじ&感想レビュー

書店のミステリーコーナーで平積みされていました。

蒴立木「死亡推定時刻」

ページ数;474ページ

発行日;2006年7月20日(初版1刷発行)

    2023年2月10日(26刷発行)

読了日;2023年5月10日

【評価】

● ページ数 ★★★★

● 文字数  ★★★☆☆

● 状況説明量★★★★

● スリルさ ★★★★★

● 恋愛要素 ☆☆☆☆☆

● スピード感★★★★

【あらすじ】

山梨県である少女が誘拐される事件が発生しました。その少女は地元の有力者の娘。犯人からの要求は身代金1億円。警察との連携により身代金の受渡しの手筈を整えますが、犯人の要求に答えることが出来ずに失敗してしまいます。そしてその後、その少女が遺体で発見をされてしまいます。警察の捜査の上、1人の男性(小林昭二)が逮捕されますが、実は小林は犯人ではありません。そうです、冤罪により逮捕されてしまったのです。警察関係者はその事実を見て見ぬふりをして、小林を問い詰め、嘘の証言をさせ、嘘の証拠作りと嘘の供述調書をを作り上げ、小林を犯人に仕立て上げてしまいます。そして、その嘘の調書をもとに裁判が実行され、まともな審理もされずに結審し、判決はなんと死刑!なぜ警察は小林が殺人を犯していないと分かっていながら、彼を犯人しなくてはいけなかったのか。

死刑判決後、上告され、ある弁護士(川井倫明)が国選弁護士としてその事件を引き継ぎます。彼は第1審の判決や審理に疑問を持ち、小林が冤罪であると確信します、無実の人間を救いたい一心で画策をする弁護士川井。いよいよ、上告審の判決も言い渡されます。小林昭二の無実は証明されるのでしょうか?それとも冤罪を晴らすことはできないのでしょうか?

【感想】

非常に面白く、ドキドキしながら、次の展開を早く知りたいという気持ちが強くなる本でした。本の帯にも書かれているように「冤罪はこうやって作られる」ということをよく理解できるストーリーです。被害者の家族、警察、法医学者、検察、裁判所など登場する各々の利害関係が複雑に絡み合って、この事件の冤罪は作り上げられてしまいました。ポイントは殺された少女の“死亡推定時刻“です。死亡推定時刻が何日の何時になるかが、この小説の一番の肝であり、冤罪工作の始まりと言ってもいいかもしれません。本作は大きく2部構成で書き上げられており、第1部では冤罪が作り上げられて死刑判決が出るまでを描き、第2部では、冤罪を証明するため、無実な人間を救うために奔走する弁護士川井倫明を中心に描かれています。

著者が法曹関係者で専門的知識を持ち合わせているということで、専門的な状況を説明するシーンも比較的多かったですが、深く入り込むようなマニアックな説明ではなく、必要最低限の状況説明に留まっている印象があり、テンポもよく物語が進んでいったので苦なく読むことができました。

『禍福はあざなえる縄の如し』

この言葉が最後に登場します。“人生は禍いも幸福も混ざり合った縄のようなものだ“という意味ですが、この本のテーマである冤罪とはまさにこのようなことだと語っています。

果たして、

冤罪はどのようにして作り上げられしまったのか。

川井倫明は死刑判決を受けた小林昭二を救うことができるのか。

真犯人は誰なのか。

気になる方はぜひ読んで見てください。